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腰痛:腰痛に有効な優しいストレッチ

こんにちは、院長のたかのです。近年SNSの発展でストレッチなどのセルフケアの情報が簡単に手に入るようになりましたね。便利な一方で大衆向けの内容では、症状に適さない内容もあり、人によっては良かれと思ったセルフケアが、かえって症状を悪化させてしまう場合も見受けられます。そんな背景から本日は腰痛の優しいストレッチのお話をさせていただきますね。

12月に入り、朝晩の冷え込みが一段と厳しくなってきましたね。気温が下がるこの時期は、体が冷えて血流が悪くなり、腰まわりの筋肉がこわばりやすくなります。特に長時間のデスクワークや車の運転が続く方は、知らないうちに腰にハリを感じている方も多いのではないでしょうか。

 

そんな時、「自分でできるケア」として多くの方が取り入れるのがストレッチです。最近はYouTubeやSNSでストレッチ動画が豊富に紹介されており、手軽に試せるのが魅力ですよね。しかし一方で、間違った方法や強すぎる動きをしてしまうと、筋肉を余計に傷めたり、かえって腰痛を悪化させてしまうこともあります。

 

実際に整形外科で勤務していた頃も、「動画を見てストレッチしたら余計に痛くなった」という患者さんが少なくありませんでした。正しいストレッチは、腰痛の緩和だけでなく、再発予防にも大きな効果が期待できます。

 

今日のテーマでは、「腰痛がある方でも安心して行える優しいストレッチ」についてお伝えします。

 

 

 

☑原因とメカニズム

腰の構造を理解することも、痛みを根本から改善する第一歩です。腰椎(ようつい)は骨盤の上に乗っていて、通常はなだらかに前へ反っています。これを「腰椎の前弯(ぜんわん)」と呼びます。この前弯が強すぎると、いわゆる「反り腰」となり、腰椎の関節や靭帯に負担がかかりやすく、腰椎椎間関節症や腰部脊柱管狭窄症などの症状を出すきっかけになることがあります。

 

逆に、前弯が少なくなって腰が丸まりすぎると、椎間板に圧力が集中し、椎間板ヘルニアなどを引き起こしやすくなります。つまり、腰椎は反りすぎても丸まりすぎても良くありません。

 

また、腰椎は骨盤の動きやバランスにも大きく影響されます。骨盤に十分な動きがないと、腰の動きが制限され、代わりに腰椎が過剰に動いてしまうのです。結果として腰椎に負担が集中し、痛みや支える筋肉のハリを感じやすくなります。

 

腰の健康にとって大事なのは、

1. 腰椎が自然な前弯カーブを保つこと

2. 骨盤や腰椎に付く筋肉がしなやかに動くこと  

この2点です。

 

 

中でも、腸腰筋(ちょうようきん)とハムストリングス(太ももの裏の筋肉)の柔軟性が特に重要です。腸腰筋が硬くなると骨盤が前に傾き、反り腰が強くなります。反対に、ハムストリングスが硬いと前かがみ動作の際に骨盤の動きが制限され、腰に過度な負担がかかってしまいます。

 

 

このように、腸腰筋とハムストリングスのバランスこそが、腰痛予防の鍵と言えるのです。

左が腸腰筋、右がハムストリングス

 

 

 

☑症状・関連性

自分の腰椎が正しい位置にあるかどうか、簡単にチェックしてみましょう。  

 

 

鏡の前に立ち、横から自分の姿勢を確認します。耳・肩・骨盤・膝・くるぶしが一直線に揃っていれば理想的な姿勢です。

次に、ハムストリングスの柔軟性を確認してみましょう。膝を伸ばしたまま前屈し、指先が床からどれくらい離れているかを見ます。

 

15〜20センチ以上離れている方は、太もも裏が硬くなっている「タイトハムストリングス」の可能性があります。

 

研究でも、ハムストリングのストレッチが腰痛の軽減に有効であることが分かっています。複数の研究をまとめたメタアナリシスでは、ストレッチによって痛みスコア(VAS)が有意に低下したという結果が得られています(SMD=-0.72)。

 

また、腸腰筋のストレッチも骨盤自体の可動域を増やし、反り腰の改善に効果的とされています。

「骨盤の位置が正しくない」「太もも裏が硬くて張っている」「腰にハリや痛みが出やすい」という方は、腰痛が悪化する一歩手前の状態です。放置するとぎっくり腰などの原因になりますので早めにセルフケアを始めて体を守りましょう。

 

 

生活習慣・ストレッチ法

ここからは、悪化リスクの少ない腰痛のある方でも安心して行える“優しいストレッチ”を紹介します。

強く引っ張るようなストレッチではなく、呼吸を意識しながら「緩めること」を目的に行いましょう。

 

 

 

① 腸腰筋ストレッチ

•事前確認:立って腰を反らし、痛みが出ない範囲で止めましょう。そのときの反らせる角度を覚えておきます。

 

•方法:仰向けになり、膝を立てた姿勢で、おへそから指3本分外側あたり(腸腰筋の位置)に手を当てて少し圧迫しながら、

ゆっくり腹式呼吸を10回行います。 

 

•効果確認:再び立って腰を反らしてみて、さきほどより反らしやすければOKです。

 

② ハムストリングスストレッチ

•事前確認:仰向けのまま、膝を伸ばして足首を反らせ、脚を上げていきます。太もも裏からお尻までつっぱる位置で止めて、その高さを覚えておきます。

 

•方法:つっぱり感を感じる位置で脚を保持しながら、太もも裏(ハムストリングス)を手でつかみ、膝をゆっくり曲げて伸ばすを10回繰り返します。ハムストリングスを片手でつかめない場合は両手でも大丈夫です。

 

•効果確認:もう一度足を上げてみて、さきほどより上がりやすければOKです。

どちらのストレッチも「気持ちよい、少し突っ張る」と感じる範囲で行うのがコツです。呼吸を止めずに、1セット10~20回を目安に、1日朝夜合計2セット続けてみましょう。

 

☑まとめ

腸腰筋とハムストリングス、この2つの筋肉を上手に緩めていくことで、腰への負担はぐっと減ります。

ただし、部分的なストレッチはあくまで応急処置で、長年染みついた筋肉の硬さ、体の歪み、骨盤の位置不正により、再びハリや痛みが出てきてしまうこともあります。

当院では、患部である腰痛の「原因筋」とそれを発生しやすくしている「骨格の歪み」の両方を見ながら、症状に合わせたオーダーメイドの施術を行っています。痛みを取るのはもちろん、再発しにくい体づくりをサポートします。腰のハリや違和感が気になる方は、どうぞお気軽にご相談ください。