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腰痛:立ち仕事・介護職で腰を壊さないための体の使い方とコルセットの正しい使い方

こんにちは、院長のたかのです。 腰痛の患者さんとお話する中で、コルセットの付け方が分からないとの声をいただきましたので、今日は正しいコルセットの付け方を含めた腰痛のお話をさせていただきますね。

☑原因・メカニズムについて
立ち仕事や介護のお仕事をしている方の腰は、実は毎日コツコツと負担がたまり続けています。長い時間同じ姿勢で立っていると、腰や太ももの筋肉がずっと働きっぱなしになり、血のめぐりが悪くなって筋肉が疲れて硬くなってしまいます。その結果、関節の動きが悪くなり、だんだんと腰まわりのバランスが崩れていきます。


介護現場で多い「移乗動作(ベッドから車いすへの移動など)」では、つい前かがみで“よいしょ”と持ち上げてしまいがちです。本来は膝を曲げて、自分の身体を相手に近づけ、お腹に力を入れて動かすのが理想です。でも、時間に追われていたり、疲れていたりすると、どうしても腰だけでがんばる姿勢になってしまいます。


こうした「ちょっと無理な姿勢」「なんとなく前かがみ」が続くと、体の重心の位置そのものが少しずつずれていきます。本来は足の裏の真ん中あたりに重心が乗るのが良い状態ですが、知らないうちに前のめりになっていたり、どちらか片足にだけ体重がかかる癖がついたりします。重心がずれた状態が続くと、腰だけでなく、股関節・膝・足首など全身にも歪みが波及し、痛みやだるさが慢性化していきます。


腰痛は、ある日突然「いきなり起こるもの」というより、「毎日の体の使い方の積み重ね」で少しずつ作られていくものです。今、腰に違和感がある方は、すでに体からの“黄色信号”が出ていると思ってください。


☑症状・関連性の解説
立ち仕事や介護職の腰痛でよく見られるパターンが、「朝〜午前中はまだマシだけれど、午後〜夕方にかけてだんだん辛くなる」という経過です。朝は体が休めた状態からスタートするので比較的楽でも、仕事で立ちっぱなし、中腰作業をくり返すうちに、腰の重さ・だるさ・張り感が少しずつ強くなっていきます。これは、筋肉の疲労と血流の低下が進んでいく“使い過ぎサイン”と考えてください。


そのまま我慢して続けていると、痛みは腰だけにとどまらず、お尻・太もも・ふくらはぎと、足全体へ広がっていくことがあります。腰から出ている神経や筋膜はつながっているため、一か所が硬くなると、その周りもどんどん巻き込まれて広い範囲が張ってくるのです。「腰だけ痛かったはずが、いつの間にか足までパンパンでだるい」という状態になってしまう方も多く見られます。


さらに悪化してしまうと、たとえば台所での1時間ほどの料理や洗い物といった、ごく普通の家事の立ち作業ですら辛く感じるようになります。ちょっと前かがみになるだけで腰がビクッとしたり、立っているだけでしんどくなったりしてくると、日常生活そのものの質が落ちてしまいます。「休めば少しは楽になるけれど、仕事をするとまた痛みが戻る」というくり返しになっている方は、かなり腰に負担がたまっている状態です。


この段階まで進んでしまうと、自然に良くなるのを待つだけでは追いつかず、正しいケアと体の使い方の見直しが必要になってきます。早めに対策を始めるほど、回復もスムーズです。

 ☑生活習慣・ストレッチ法・解決法について
まず知っておいてほしいのは、コルセットの役割は「腰をガチガチに固定すること」ではなく、「過度な前かがみを防ぎ、腹圧を高めて腰を支えること」です。腰の骨(腰椎)は、お腹側の筋肉(腹筋)と背中側の筋肉(背筋)の両方からサンドイッチのように支えられています。お腹の筋肉がうまく働くと、そのぶん背中側の負担を減らすことができます。


よく耳にする「コルセットを使うと筋肉が落ちる」という話ですが、それを裏付けるはっきりした医学的な根拠はありません。むしろ、痛みを我慢して姿勢が崩れたまま働き続けるほうが、筋肉にも関節にも悪影響が出やすくなります。仕事中に腰がつらい場合は、若い方でもコルセットを上手に使って体を守ってあげて大丈夫です。

 

コルセットは幅広のもので、第一、第二ベルトで締められるものを選びましょう

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①息を吐いてお腹をへこませてテンションをかけ第一ベルトを締めましょう

②少し骨盤にベルトがかかり、ベルト幅中央に(指でさしている位置)骨盤の上のくびれがくるようしましょう

③息を吐いてお腹をへこませてテンションをかけ第二ベルトを締めましょう

骨盤上のくびれが適度に締まります。装着した状態で腹式呼吸をした時にお腹に圧が感じられるくらいが良いです。食事の時苦しければ第二ベルトは緩めてみてください。

ベルトの正しい付け方は写真のように骨盤にかかるようにして、骨盤上のくびれが適度に絞まるようにしましょう。上すぎても下すぎても効果が半減してしまうため注意してください。また第一ベルト、第二ベルトともに息を吐いてお腹を凹ませた状態でつけるのがポイントです。

 

「ずっとつけっぱなしは気になる」という方は、「今日は重い物をたくさん持つ日」「長時間の立ち仕事がわかっている日」だけ使用する方法でも構いません。その際、意識してほしいのが腹式呼吸です。重い物を持つ前に、鼻から息を吸ってお腹をふくらませ、口からゆっくり吐いてお腹をへこませるようにすると、自然とお腹の筋肉が働き、腹圧が高まって腰を内側から支えてくれます。


ただし、コルセットはあくまで「その場の負担を軽くするための補助」です。根本から良くしていくためには、長年しみついた体の歪みを整え、正しい姿勢や体の使い方を身につけることが大切です。当院では、痛みの出ている部分だけを触るのではなく、骨盤や背骨、全身のバランスを確認しながら歪みを整え、「無理をしなくても良い姿勢がとれる体」を目指して施術を行っています。
「最近、夕方になると腰が重いな」「仕事終わりのだるさが続いているな」と感じている方は、早めに相談していただくことで、悪化を防ぎやすくなります。


☑まとめ
立ち仕事や介護のお仕事で起こる腰痛の多くは、「毎日の姿勢」と「体の使い方のクセ」の積み重ねから生まれます。コルセットで腹圧をサポートしながら、少しでも前かがみを減らすことは、腰を守るうえでとても有効な方法です。
ただ、コルセットだけに頼るのではなく、体の歪みを整え、正しい動かし方を身につけることで、将来の腰のトラブルを減らすことができます。「このまま腰を壊したくない」と感じている方は、一度ご自身の姿勢や体の使い方を一緒に見直していきましょう。